夏といえばホラー映画ですよね!
今回はそんな暑い時期にぴったりの、A24のおすすめホラー映画3本をご紹介します。
A24とは個性的な映画ラインナップを次々制作している、ニューヨークの製作会社。
ラブストーリーからヒューマンまで様々なジャンルを手掛けており、どれもが現代的でおしゃれなんです。
「配給会社で映画を選ぶ」というムーブメントを創り出した立役者でもあります。
サブカル好きなら必ずチェックしておくべきレーベルで、特におすすめなのが「ホラー映画」です!
A24はびっくりするのが苦手な人でも見られる、抒情的なホラー映画を数多く配給しているんです。
その中でも特におすすめの、今見るべきホラー作品をご紹介していきます。
Contents
大ヒットホラー映画【ミッドサマー】

A24を一躍有名にした大ヒットホラー『ミッドサマー』
舞台はスウェーデンの片田舎、ホルガ村。
主人公のダニーは旅人として村を訪れ、恐ろしい奇祭に巻き込まれます。
なにが革新的な映画だったのか?
この映画の革新的なところは、恐怖と美しい光景のコントラストです。
ホルガ村ではドラッグ・乱交・殺人など、インモラルなことが当たり前の習慣として行われています。
そしてそれを包むのは、白夜と色とりどりの草花。
本来ホラー映画は闇夜を描くジャンルでした。しかし、真昼間に当然のごとくバイオレンスな事が行われていると、自分の持っている異常/正常の基準が徐々に揺らぎ始めます。
これがミッドサマーの持つ、新感覚な恐ろしさなのです。
導入部で明かされるダニーの陰惨な過去は、雪の降る閉鎖的なイメージで構成されています。ホルガ村とは対照的です。
村で起こる事件は目をそむけたくなるような事ばかりですが、ダニーにとって本当の幸せとはなんなのか?
景色そのものが揺らぐ彼女自身の心象を投影した、と捉えることもできます。
フォークロアな世界観
『ミッドサマー』が大ヒットした理由において捨て置けないのは、衣装・美術の愛らしさです。
A24の持つおしゃれなブランド力に、ビジュアルイメージが重視されるSNS展開がうまく合致し、普段ホラーを見ない層へのアプローチが働きました。
ホルガ村の人々の衣装は、白のリネンで統一されています。
神聖さをたたえながらも、そのまま街に着て行けそうにファッショナブル。村の花が服の上に咲き乱れたかのような刺しゅうは、フォークロアな可愛さがあります。
こういったファッションスタイルや花冠、ルーン文字をあしらった美術は“ミッドサマーっぽい”で伝わる意匠を成立させます。
さらに数々のネットミームも生み出しました。
映画を物語るファッションをチェックするだけでも、十分に楽しめるようになっています!
前作『ヘレディタリー/継承』
アリ・アスター監督のデビュー作『ヘレディタリー/継承』も、A24配給です。
こちらはアートワークから伝わる印象そのままの暗いホラーですが、『ミッドサマー』に通底する家族共同体への執着が感じられます。
ぜひ、合わせてチェックしてみてください。
『ミッドサマー』作品情報
- 【公開】2020年2月21日
- 【制作国】スウェーデン
- 【レーティング】R15+
- 【監督/脚本】アリ・アスター
- 【キャスト】フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィル・ポールター、ビョルン・アンドレセン
最新作ホラー映画【X エックス】

引用:X エックス公式サイト
続いて、2022年7月8日に公開されたばかりのA24最新作『X エックス』
時代は1979年にさかのぼります。
テキサスの田舎を訪れた若い映画撮影隊と、その6人を狙う老夫婦を描いたスラッシャーホラーです。
殺人鬼は老人!
映画の中の殺人鬼と言えば、ジェイソン、フレディ、ソウなど…
アイコニックなキャラクターが思い浮かびますが、今作に出てくる殺人鬼は老人!
しかも80歳はゆうに超えているであろう老衰ぶりで、とてもこちらを襲ってきそうには見えません。
それだけに最初の一撃は本当に衝撃的です。
もちろん今までにない悪役像という意味での面白さはあるのですが、今作のキモは“老い”に対する新しい可能性を提示したことだと言えます。
主題は老婆側にある
老夫婦の妻側にあたるパールは老いてもなお、強い性欲を持ち続けています。
そして行き場のない性衝動が、次第に殺意へと変化していきます。
この老婆の姿がとても哀しく描かれていて、恐ろしさとともに同情を感じるのです。
今までフィクションでは、無意識のうちに禁忌とされていた老人の性衝動。
人間として当たり前の欲求を、当たり前に持ち続けている姿を描くことで、自分と“老い”が同一線上で結ばれていることを意識してしまいます。
誰もが避けられない“老い”。
それだけにどんな人が見てもおぞましく、自分の行きつく先と重ねてしまう部分が見つかるのではないでしょうか。
ただ驚かせるだけの残酷ホラーにとどまらない、趣深さがあります。
さらにこの老婆には、驚くべきもう一つの秘密があるのですが…
重大なネタバレになりますので、エンドクレジットを見て実際に確認してみてくださいね!
映画黄金期へのオマージュ
今作は過去の映画群に対するオマージュも満載。
“若者がテキサスで殺人鬼に追われる”というストーリーは『悪魔のいけにえ』と全く同じです。
『サイコ』『サンゲリア』『悪魔の沼』など、往年の名作ホラーへのオマージュはサブカルファンなら必ず気付くであろうちりばめ方。
先を行くクリエイターへの敬意があり、これまた嬉しくなってしまいます。
古典へ回帰しながらも、A24らしい現代的な視点を取り入れていますね。
そして主人公たちが撮っている劇中映画は、70年代のポルノ映画黄金期を体感できる装置となっています。
70年代の本格ポルノには“XXXレート”と呼ばれるレーティングがありました。
本作のタイトル『X』は、そういったカウンターカルチャーへの目くばせでもあるでしょう。
『X エックス』作品情報
- 【公開】2022年7月8日
- 【制作国】アメリカ
- 【レーティング】R15+
- 【監督/脚本】タイ・ウエスト
- 【キャスト】ミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、マーティン・ヘンダーソン、ブリタニー・スノウ
幽霊映画【ア・ゴースト・ストーリー】

最後は『ア・ゴースト・ストーリー』
先の2作品はいわゆる「人間が一番怖い」タイプのホラーでしたが、本作は直球に幽霊映画です。
といっても幽霊が襲ってくる話ではなく、怖さのないラブストーリーです。
遺される“想い”
『ア・ゴースト・ストーリー』は上映時間90分という短尺。
ですが悠久の時間を旅してきたかのような雄大さを、私たちにも感じさせてくれます。
事故によって突然死んでしまった主人公。
その主人公であるゴーストの一人称視点で、物語は進みます。
地縛霊となってさまよいながら自由に時間を行き交いしている様子は、SF的な雄大さを感じさせます。
『インターステラー』に感動した観客は、きっとこの映画でも涙してしまうのではないでしょうか。
人は悲しみの最中にいるとき、過去/現在/未来を同列に見ますが、ゴーストのさまよいはそれを体現しています。
何をもって「生きた」と言えるのか、どういった想いを遺すか、探る旅路が描かれているのです。
深い余韻を残し、何度も見たくなるような感動作になっています。
ファンからは
「最もA24らしい!」
と評される、アーティスティックな作品です。
贅沢なケイシー・アフレック遣い
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー主演男優賞を受賞した直後のケイシー・アフレックが主演です。
ただしファンの方はご注意を。彼の顔はなんと冒頭10分しか映りません!
その後はずっとシーツを被ったようなゴースト姿で、台詞が一言もないのです。
しかし、何もしていないのかと言うと、そんなことはないのが驚き。
さすがオスカー男優、ただ佇んでいるだけなのに悲哀が漂っていますし、シーツの穴から徐々に感情が見えてきます。
長回しが多く淡々とした物語のムードが、演技の機微に私たちの意識を向けさせるのでしょう。
監督のユーモアと、俳優たちへの強い信頼を感じます。
『ア・ゴースト・ストーリー』作品情報
- 【公開】2018年11月17日
- 【制作国】アメリカ
- 【レーティング】G(全年齢)
- 【監督/脚本】デヴィッド・ロウリー
- 【キャスト】ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ、ケシャ
まとめ

今回は「今大注目の制作会社「A24」の見るべきホラー映画 3選!」と題して3本の映画をご紹介しました。
最新作『Xエックス』は、シリーズの続編製作が決定しています。
これはA24初の試み。
若き才能を多数輩出してきたA24、これからもそのチャレンジングな姿勢から目が離せません。
コメントを残す