誰しもが一度は人生に迷い、落ち込んだり悩んだりしたことがあるのではないでしょうか。
「わたしはこのままでいいのだろうか?」「実年齢に見合った年の重ね方をしているのかな?」
そんな茫漠とした不安に埋め尽くされたとき、映画の主人公たちの姿は悩みを解決するきっかけになることがあります。
そこで本記事では、人生に迷ったときに見たい映画を3つ紹介します。
ある女性は他人に頼れず殻に閉じこもり、ある女性はダメな自分を受け入れられず逃避行し、またある女性は何者でもない自分を恐れ、新たな刺激を求め続ける。
彼女たちの不器用だけれど思わず抱きしめたくなる姿に、きっと共感できる部分があり励まされる人も多いはず。
そんな「どんな自分も肯定してもらえる」珠玉の映画3本です。
Contents
他人に頼ることを知る『私をくいとめて』
映画『私をくいとめて』の主人公、黒田みつ子(31歳)。
おひとりさまライフがすっかり板について、週末はひとりで色々な所へ出かけて行きます。
そんなみつ子は人間関係などで困ったことがあると、脳内の相談役「A」に相談を持ちかけていました。
つまり、もう一人の自分「A」がいつもその場に適した答えを出してくれていたのです。
「『A』がいてくれれば一人でも大丈夫」
そう思っていたみつ子でしたが、ある日、年下の営業マンの多田くんに恋をします。
その恋のはじまりが、平和なおひとりさまライフの日常を変えていくことに。
みつ子と「A」との掛け合いが軽妙で最高
何と言っても、みつ子と「A」との掛け合いが軽妙で最高なんです。
みつ子ほどはっきりと自分自身と会話するわけではなくても、脳内で独り言を言っているときってありませんか。
困ったとき、迷ったとき、
「え?どうすればいいんだっけ?」
そうやって自問自答せざるを得ないときもあると思うんです。
だからこそ、ここまで潔くハッキリとした形でもう一人の自分が具現化され、自分をいちばんに理解してくれる存在として描かれていることに共感できすぎて何度も頷いてしまいました。
みつ子にとって多田くんとの出会いは喜びを感じる反面、これまで自由気ままに過ごせていた自分だけの世界に他者が介入してくることでもあって、最初は戸惑ってしまうんです。
ひとりは気楽でいいけれど、寂しくないかというと嘘になる。
そんな自分の正直な気持ちに気づき、一歩踏み出したときに今まで見えなかった景色が見えてきます。
どちらがいい悪いという話ではなく、みつ子が誰かに自分の一部を手渡していくことで、彼女自身が少しラクになっていったようにも思えました。
できないことや苦手なことは、素直に他人に頼ることも必要なんだとこの作品は教えてくれます。
『私をくいとめて』映画情報
【公開】2020、日本
【出演】のん 林遣都 臼田あさ美 若林拓也 前野朋哉 山田真歩 片桐はいり/橋本愛
【原作】綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
【監督・脚本】大九明子
【音楽】髙野正樹
【劇中歌】大滝詠一「君は天然色」(THE NIAGARA ENTERPRISES.)
完璧を求めなくてもいい『フランシス・ハ』
映画『フランシス・ハ』の主人公フランシスは27歳。ニューヨークのブルックリンで、親友のソフィーと二人暮らしをしています。
ある日、彼氏と別れたばかりで傷心の彼女は、ソフィーから別の友人とルームシェアするつもりでいることを打ち明けられます。
モダン・バレエのダンサーとしてもなかなか芽が出ず金欠のフランシスにとって、予期せぬことが立て続けに起こり、居場所を探してニューヨーク中を転々とするはめに。
さらには、故郷のサクラメントへ帰省したり、パリへ弾丸旅行をしたり、向こう見ずな行動に拍車がかかっていきます。
「年齢の割にしっかりしていない」
と周囲から評価されてしまうフランシス。
彼女は周りの友人たちが落ち着いてきていることに焦りを覚えるのですが、気持ちばかりが焦って何かするたびに空回りしてしまうんです。
自分の不器用さや計画性のなさを認めることができず口からでまかせを言ったり、過去のどうでもいい話を初対面の人たちに一方的に話してしまったり。
どんなに情けなくても自分の足で歩んでいこう!
しかし、フランシスはそんな自分を見つめ直し、自分の欠点さえも認めてくれる存在がいることに気がつきます。
そして、どんなに情けなくても自分の足で歩んでいこうと決めたとき、彼女の新たな道は開かれていきました。
ときに派手に転び膝をすりむきながらも、決して諦めることなく前向きに歩き出そうとする姿にきっと心を打たれる人も多いはず。
不完全であることさえも魅力的に感じられる本作。
不完全でも不器用でも大丈夫。それでも進むべき道はあるのだとこの作品は教えてくれます。
『フランシス・ハ』映画情報
【公開】2012、アメリカ
【出演】グレタ・ガーウィグ/ミッキー・サムナー/アダム・ドライバー/マイケル・ゼゲン/パトリック・ヒューシンガー
【監督/脚本】ノア・バームバック/グレタ・ガーウィグ
【主題歌】デヴィッド・ボウイ「モダン・ラブ」
自分に正直に生きる『わたしは最悪。』
映画『わたしは最悪。』の主人公ユリヤは30歳。彼女のこれまでの人生は、完全に迷走していました。
医者の道を目指すも、途中で
「自分が好きなのは“魂”だ」
と気づき心理学の道に方向転換。
しかし、すぐに自分には視覚的な才能があると感じカメラマンになろうと決意します。
それで写真の道に進んだと思ったら、今度は物書きになりたくなる。
そんな具合に、次から次へと気移りしてしまい、すべてが中途半端に終わってしまうのです。
ある日、グラフィック・ノベル作家として成功している年上のアクセルと出会います。
人生のターニングポイントにさしかかっているユリヤの「選択」に、自身と重ねて心を揺さぶられる人も多いのではないでしょうか。
「わたしの人生は、いつはじまるの?」
いつまでも新たな可能性に人生のときめきを感じていたかったであろうユリヤ。
「わたしの人生は、いつはじまるの?」
と胸をときめかせ何かを待っている彼女は、時に衝動的に正直すぎるくらいに人生を駆け抜けていきます。
「こんなわたしって最悪!」
と思いながらも、そのときの自分の欲望や願望を優先しすぎて後悔したことがある人の心にはきっと刺さるはず。
何者でもない自分を認めるのが怖かったり、誰かにもっと認めてもらいたかったり、そういう自意識を持つことって少なからず誰にでもあることだと思います。
たとえ、失敗しても後になって後悔しても、すべてが無駄だったわけではないんですよね。
どんなに情けなくて惨めでもそんな自分もひっくるめて、“わたし”を形作っているのだとこの作品は教えてくれます。
『わたしは最悪。』映画情報
【公開】2021、ノルウェー・フランス・スウェーデン・デンマーク合作
【出演】レナーテ・レインスベ/アンデルシュ・ダニエルセン・リー/ハーバート・ノードラム
【監督】ヨアキム・トリアー
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